ColumnTAPコラム

2026.08.17

酷暑の夏に考える
――「エコ不安」を超えたラディカルな希望へ――

村井 伸二(Shin)

TAPセンターの指導スタッフによるコラムを毎月掲載していきます。

酷暑という言葉にすっかり慣れてしまいそうな今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。 本当に暑い日が続いていますね。「暑い」というより「皮膚が痛い」と感じるような毎日です。そのような中、熊本での地震により避難生活や復旧作業に尽力されている方々の安全と、一日も早い日常の回復を心よりお祈り申し上げます。

この記事を書いているのは8月中旬に入り、暦の上ではすでに「立秋」を迎えています。 昔は夏休みとなれば、子どもたちが川や海で思いきり遊び、虫取りなど季節を謳歌する日常がありました。しかし今や、屋外に出ること自体が危険な日も少なくありません。先日、久しぶりに家族で鎌倉の海へ行きましたが、ほんの2時間ほど浜辺にいただけでも皮膚がヒリヒリ。最近の暑さで感覚が麻痺していたのか、当日はそこまで暑く感じなかったのですが……しっかり中学の部活以来となる「皮膚ムケムケ」状態になり、そのあとのお風呂では悲鳴を上げながら痛みに耐えることになりました。

このまま毎年最高気温を更新し続け、室内で過ごすしかない時代になってしまうのでしょうか。SF小説『未来省』の冒頭で描かれるような、限界を超えた大熱波が襲う凄惨な事態が現実になるのではないかと、強い危機感を抱かずにはいられません。実際、TAPでも夏場はWBGT(暑さ指数)に配慮し、基本的には屋内での活動に限られているのが現状です。私たちは、暑さへの「対策(適応)」に終始するべきなのか。それとも環境そのものを改善する「根本解決」へ踏み出すべきなのか。その二者択一を迫られている気がします。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が警告するように、地球温暖化は人間の活動によるものであり、私たちは長年作り出してきた環境破壊の「つけ」と向き合わされています。そうした中、若者の間で「エコアングザイエティ(エコ不安)」や「気候不安」と呼ばれる慢性的な強い不安や無力感が広がっています。

高度経済成長期に生まれ、自然の中で自由に遊べた私のような世代と違い、今の子どもたちは生まれた時から「地球温暖化」や「火星移住計画」といった絶望的なイメージに晒されています。未来に希望が持てず、不安を抱いてしまうのも無理はありません。では、私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。

ウェブメディア『IDEAS FOR GOOD』では、エコ不安への対応策として、デジタルデトックスや感情の共有、マインドフルネスといった「心のケア」、そして小さなエコ活動や自然との接触、仲間づくりといった「具体的な行動」を挙げています。

これらはまさに、TAPの体験学習を通して貢献できることばかりですね。 安全に配慮しながら屋外で自然を感じ、仲間をつくる。暑さが厳しい時は室内で活動し、環境について考え、マインドフルネスで内省(リフレクション)を深める。これなら前向きに取り組んでいけそうです。いずれ火星へ移住を目指すという話にはSF的なロマンも感じますが、やはり私は、緑と水が豊かな“The Mother Earth(母なる地球)”で過ごしたい。子どもや孫たちの未来のためにも、いま手を打たなければなりません。

ただし、「まだまだ地球は大丈夫だよ」という楽観的な希望は危険です。経済思想家の斎藤幸平先生が著書『人新世の「黙示録」』で指摘するように、私たちはすでに「底つき」の段階にきています。「未来は良くなる」という幻想を捨て、最悪の事態を前提に備えることこそが、絶望から生まれる「ラディカル(根本的)な希望」へつながります。こんな過酷で「暗黒な時代」だからこそ、人間性を失わずに暮らしを守り抜く「人々の連帯」やレジリエンス(回復力)を発揮する時なのです。

「ああ、今年の夏は気持ちがいいな」 「冷たいきゅうりやそうめん、スイカ割りをして食べるスイカは美味いな」 「田んぼへカエルを取りに行こうか」 「あ~花火きれいやな。でももう夏が終わるのはちょっと寂しいな」

私の頭の中には今、井上陽水さんの『少年時代』が流れています。

「夏が過ぎ 風あざみ 誰のあこがれにさまよう 八月は夢花火 私の心は夏模様」

かつて当たり前だったこのような情緒ある夏が、再び子どもたちの未来に戻ってくることを願って止みません。ラディカルな希望を持って、できることからアドベンチャーして一歩ずつ取り組んでいきましょう。

それでは、残りの夏休み、どうぞ良い時間をお過ごしください!

Shin

<引用文献>
気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 『IPCC 第6次評価報告書(AR6)第1作業部会報告書』(2021年) 環境省
https://www.env.go.jp/earth/ipcc/6th/index.html (2026年8月2日閲覧)

キム・スタンリー・ロビンスン、瀬尾具実子訳 『未来省』 2023年、パーソナルメディア

斎藤幸平 『人新世の「黙示録」』 2026年、集英社

IDEAS FOR GOOD 「エコ不安(エコアングザイエティ)」関連記事
https://ideasforgood.jp/glossary/climate_anxiety/ (2026年8月2日閲覧)

楽曲 井上陽水 『少年時代』 (1990年)

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