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2019.7.29

人生の開拓者をはぐくむ学び

世界中で実践されてきたアドベンチャー教育を、日本で最初に導入。「行動する全人教育」をテーマに、自己冒険力をはぐくむ体験学習として、教育現場をはじめ、学内外の多様なニーズに応じる実践に取り組んできました。導入時に専任スタッフをつとめ、今年度センター長に就任した工藤教授に、あらためてTAPの意義をうかがいました。

工藤 亘
教育学部教授
玉川大学TAPセンター長

来年度で20周年を迎えるTAPセンターは、19年間にわたって積み上げた実践と研究活動を踏まえつつ、2019年度より新たなビジョンと使命を掲げて、さまざまな取り組みに挑戦していきます。
「tamagawa adventure program」「teachers as professionals」「tap」――これらはTAPの創設時に掲げた3つのコンセプトです。
子どもの成長に深くかかわる未来の教師を育てる‶教員養成の玉川″として、果たすべき使命とは子どもたちの心身を豊かにはぐくむ「教育の専門家」を育てることではないでしょうか。
そこで、あらためて創設時のコンセプトに立ち返り、TAPの手法を通して教育の現場に変革をもたらすことを目標としています。
TAPは「全人教育」を具現化するための、実践的で体験に根ざした教育手法のひとつです。子どもたちはそれぞれのタイミングで気づきを得て成長し、「真・善・美・聖・健・富」の6つの価値をバランスよく備えた全人として飛び立ち、社会で活躍してほしい。そのためには自己冒険力、いわば自分で人生を開拓していく力を培う教育が大切だと考えています。
必要なのはアドベンチャーに踏み出しやすい環境を整えること。さらにはチャレンジをうながすファシリテーター(支導者)として、子どもたちを導く教師のあり方が重要だと考えています。

キーワードは‶アドベンチャー″

成功するかわからない不確かなことにあえて挑戦する。これがアドベンチ ャーの定義です。
大人になるにしたがいアドベンチャーをしなくなり、自分の失敗ですら認められなくなるものです。ですが、失敗も成功も受け入れて、人と人が互いに支えあうことが大事だと気づくこともひとつの成長であり、アドベンチャーの役割ではないでしょうか。
また、チャレンジしてはじめて「夢」とはかなうもの。ですからTAPは、夢をかなえるためのひとつの教育手法。子どもたちが全人の花をきれいに咲かせるためのイチ栄養素の役割を果たしたい。自分の力で夢をかなえるためのアドベンチャーを手助けすることが TAPの存在意義だと思います。
創立者の小原國芳は講話などで聖書から「求めよ、然(しか)らば与えられん」「叩けよ、然らば開かれん」という言葉をたびたび引用していました。自らアクションを起こして扉を開かない限り、 何も変わりません。成功するかどうかわからないアドベンチャーにチャレンジすることの大切さを伝えていきたい。教育の現場だけではなく、どんな場面であっても共通することだと思います。

挑戦できる環境をつくる

TAPのコンセプト
tamagawa adventure program
チームで協力し、人と支え合う体験学習を
通して、生きる力を身につける

teachers as professionals
教師としての専門性を発揮して、
子どもの可能性を促進すること

tap
ノックしてドアを開くこと。
自己開示や自己発見の実践を指す

TAPにはC-zone、S-zone、P-zoneという考え方があります。慣れ親しんだ快適な場所にとどまりたいのは人としては当然のこと。ですが、いずれ、家族に守ってもらえる安心できる場所から、自分の足で一歩踏み出して社会に出ていかなければなりません。
子どもは歩けるようになったら庭先へ、三輪車に乗れるようになれば公園に、さらに電車で近隣の町へ……と、成長にともない徐々に行動範囲を広げていきます。その過程で人と出会い、道を尋ねたり、切符を買うなどの行動を通して、さまざまなことを学びます。外に出て人間関係をつくることで、社会性を身につけていきます。
「井の中の蛙大海を知らず」と言いますが、人はアドベンチャーすることで成長します。それぞれのC-zoneを広げるようにうながすことが、教師やファシリテーターの役割でもあります。そのためには挑戦できる環境をつくることが大切だと考えます。
TAPの学びをいかにふだんの生活や職場につなげるかが大切です。個性を引き出し、刺激やヒントを与え、子どもの心に火をつける。自己肯定感をはぐくみ、子どもが輝ける場面を用意する。‶教員養成の玉川″としてTAPを通して、そんな教師を育てて、全国の教室に送り出したいと考えています。

未来にむけて

これまでの実践を土台に、今後は理論との統合を進めます(theory and practice )。来年秋には書籍を刊行予定です。分野の異なる部門とのコラボレーションも構想しています。例えば脳科学研究所とTAPの教育効果を脳科学的に検証する共同実験を検討しています。さらに21年度よりK‐12の「道徳」教科にTAPを本格的に導入するため「アクティブ道徳教育研究会」を今年発足させました。
玉川で取り組む意義を問い、玉川だからできることを追求し、実践と研究の往還によって、TAPという教育手法の理論的な体系化をめざします。

出典:全人2019年6月号
写真=秋山まどか

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