ColumnポストコロナとTAP
ポストコロナとTAP(第1回)
川本 和孝(Kazoo)
TAPスタッフが短期集中コラムとしてコロナ禍の教育の実情と課題について提言します。
通常登校が再開されはじめた学校
6月29日現在、玉川大学では新型コロナウイルスの感染予防に伴い、遠隔授業が継続的に行われています。オンライン授業等の遠隔授業は、開始当初の頃は教員も学生も「不慣れ感」があったものの、今ではかなり定着してきており、遠隔授業においてもアクティブラーニングが展開できるようになってきています。
一方、私立・公立を含めた小学校~高等学校では、休校明けから段階的な分散登校をふまえた上で、徐々に通常登校に戻ってきており※1)、多くの学校が給食も踏まえ通常の時間割を取り戻しつつあります。しかし、通常登校とは言うものの、学校現場における実態は、感染予防に関連した様々な制限があり、明らかに今までの「当たり前」が通用しない現状です。授業中には隣の人との会話は許可されず、学校によっては休み時間すら行動が制限され、「友達とおしゃべりできる」「友達と遊べる」という子供たちの期待を、先生方は不本意ながらも抑圧せざるを得ない状況が続いています。
※1 文部科学省 「新型コロナウイルス感染症に関する学校の再開状況について」令和2年6月1日
https://www.mext.go.jp/content/20200603-mxt_kouhou01-000004520_4.pdf
制限される「集団活動」の現状
そのような制限下の中、3密の回避やソーシャルディスタンスの確保が強く求められ、TAPのような集団活動は著しく制限されています。同様に、学校行事や児童会・生徒会活動、クラブ活動(部活動)、学校行事といった、様々な集団活動にもその影響が及んできています。「学習の遅れ」が様々なところで話題となり、教科指導主体の現状ですが、そうした問題を蔑ろにしたままでは、学校は「新型コロナウイルスによる間接的危機状況」に至ることが懸念されます(本コラムでは、その要因を様々な角度から検証していきます)。
問題解決場面から遠ざけられる子供たち
予測困難な社会の変化に主体的に関わり、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要である。
文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編」、 p.3(改訂の基本方針)
これは、小学校学習指導要領解説総則編に記されている、改訂の基本方針です。しかし、新型コロナウイルスという予測困難な社会状況に至った今日、そこに主体的に関わる機会が本当に子供たちに委ねられているのでしょうか。どのように社会(学校)をよりよいものにしていくか、という目的を自ら考え、自らの可能性を発揮する機会が与えられているのでしょうか。もちろん、新型コロナウイルスの感染予防に伴う問題を、全て子供たちに委ねたり、考える機会を提供したりするということではなく、ある程度の大枠を大人たちが設定することも大切です。ただ、現状のリアルな「問題解決場面」を子供たちから取り上げてしまったら、「よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力」は身に付けることはできないと考えています。
人格の完成、平和的で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質の育成!?
教育基本法には次のように書かれています。
第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
それではこの、「民主的」とは何でしょうか。
1.その国の主権が国民にあること。
2.人間の自由や平等を尊重すること。「民主の精神」
【出典】デジタル大辞泉(https://kotobank.jp/dictionary/daijisen/3144/)
つまり、「民主的な学校」とは、主権はもちろん教師にも保護者にもありますが、そのメインは「子供」にあるはずです。そして、「自分たちのことは自分たちで話し合って決める」ということが、「民主的」の基本です※2)。
※2 学校現場では「自治的活動」と呼ばれています。
私たちがこれまで実践してきたTAPでは、教育基本法や全人教育を基盤とした上で、こうした「民主的な学校」づくりのための一つの手段として考えてきました。そもそも、民主的でない思想や言動が制限される社会では、全人教育もTAPも成立は困難だと思います。アクティビティーやチャレンジコースばかりに目がいきがちですが、TAPの本質はアドベンチャー教育を通じて「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身」を養うこと、そして「よりよい社会と幸福な人生の創り手」を養うことです。アクティビティーやチャレンジコースは、本来そのための一つの手段なのです。新型コロナウイルスという予測困難な問題が目の前にある今日において、TAPの活動で培ってきた「問題発見」と「問題解決」の知識やスキルは、本来このような場面において生かされると、私たちは考えています。
そこで、玉川大学TAPセンターでは、緊急企画として「新型コロナウイルス感染症に伴う学校現場における集団活動に対する提言」を、数回に分けて実施していきます。教育現場における集団活動や教師の指導の在り方について、TAPやファシリテーターという観点から、私たちスタッフそれぞれの想い・考えを発信していきますので、ぜひこの際に定期的にホームページをチェックしてみてください!
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