ColumnTAPコラム

2021.04.02

「誰かのために行動し、何らかの影響を与えること」を
リーダーシップの定義に!

工藤 亘

TAPセンターの指導スタッフによるコラムを毎月掲載していきます。

*今年度より、TAPセンターの指導スタッフによるコラムを毎月掲載していきます!
テーマはそれぞれに委ねてありますのでお楽しみに!
まずは率先垂範でセンター長の私から!テーマは「リーダーシップ」です。

2020年10月~2021年2月にかけて早稲田大学の履修証明プログラム「21世紀のリーダーシップ開発」(120時間)を受講し、3月に履修証明書を頂くことができました。ZOOMによる授業に9名が(企業系6名、教育系3名)参加していました。
参加者全員が目的意識やモチベーションが高く、多様な価値観や互いの専門分野を活かしたディスカッションは刺激的でした。そしてヘルシーかつコンストラクティブなフィードバックをしながら相互支援をしたことが最も印象的でした。これが「権限のないリーダーシップ」に繋がり、体験的にリーダーシップの最小3要素(率先垂範、目標設定・共有、相互支援)を学ぶことができました。

図.桃太郎を例にしたリーダーシップ(工藤,2021)

リーダーシップ開発の早期化が求められる理由の一つは、組織の理想像が変化したことです。これまでの組織はトップが方針を示し、その考えや与えられた仕事に取り組むことで成立していました。しかし、環境変化のスピードが激しい今日では、単にトップの方針に従い指示を待っていては環境変化に対応できず、組織は生き残っていくことが不可能になってきたのです。これからはトップの方針や顧客・組織の現状を踏まえ、自分が今何をするべきか考え行動し、他者を巻き込み、影響力を発揮していくことが求められています。こうしたニーズや現状から、管理職に就く前や社会にでる前からのリーダーシップ教育が求められているのです。

現行の学習指導要領では「探究」という教育方法が重要視されています。地球規模の課題解決やSDGsの目標達成には学習者が主体となり、ペアやグループ等の学習者同士の協力が必要不可欠です。UNICEFは地球規模の課題の学習は、問題解決的かつ未来志向を必要とし、知識の獲得だけでなく態度の変容や課題解決能力、そしてリーダーシップの育成を求めています。

35年以上前の研究で「リーダーシップの定義は850を超える」(Bennisら,1985)と指摘されています。したがって、現在ではその数は枚挙にいとまがないと言えます。たとえばMaCall(1988)は「リーダーは生まれつきではなく、育成できる」を前提とし、「リーダーシップの能力は学習できるものであるということ、人材開発を支援する環境づくりが企業の競合優位性を築くことになるということ、リーダーシップ開発はリーダーの責任であるということ」を主張しています。Chemers(1997)は「ある共通の課題の達成に関して、ある人が、他者の援助と支持を得ることを可能とする社会的影響過程」と定義し、Komivesら(2013)は「肯定的な変化を実現するための、人々の関係的(互恵的)で倫理的なプロセス」をリーダーシップの定義としています。Drucker、Kotter、Heifetz、Gardner・・・etc
多くの先行研究からリーダーシップの定義は一定ではありませんが、共通項は「集団を目標達成に貢献するように方向づける働きかけ」であると言え、教育や経験を通じて学習できることがわかります。
Parks(2005)はリーダーシップを「困難な問題を前進させるために、人を動かすこと」とし、「あなた自身の成功・失敗経験という百科事典にまさる教材はない。成人は、自分自身の経験から最もよく学ぶのだから、彼らの失敗経験を教材として実に有効である」と述べています。そしてリーダーシップを学ぶためには「失敗をじっくりと省みることのできる文化をつくる必要がある」と指摘し、体験学習での「ふりかえり」の重要性を説いています。

これまでのリーダーシップ研究の対象は企業や大人向けが多く、定義が多様であることから学校教育では活用しにくかったと考えられます。そこで子ども達や教師が理解しやすいリーダーシップの定義が必要だと考えています。筆者は、日向野(2013)の「権限のないリーダーシップ」を支持しつつ、子ども達が学校生活の中でリーダーシップを身近なこととして捉えられるように「誰かのために行動し、何らかの影響を与えること」(工藤,2020)をリーダーシップの定義としました。
この定義に従えば、子ども達もリーダーシップを発揮していることを自覚しやすくなると考えています。また教師もこの定義であれば、学校生活場面において多くの子ども達のリーダーシップを発揮している場面を捉えることができ、同時に承認や強化、支援が可能になります。教師がこの視点で子どものリーダーシップを捉え、そのマインドを持つためにもTAPの理論と実践は有効であり、TAPの教員研修はリーダーシップ教育の促進に貢献ができると考えています。
またリーダーシップを発揮した子どもに対するフォロアーシップも重要です。リーダーシップを発揮する体験とフォロアーシップを発揮する両方の体験によって、それぞれの立場や視点で考え、行動できるようになるのです。そのためには、異年齢集団や様々な形態の集団をつくる機会を増やし、リーダー役やフォロワー役を相互に体験できるように工夫をする必要があります。これによってリーダーシップが開発されていくのです。

TAPでは、一人のリーダーを育てることが目的ではありません。状況に応じて誰もがリーダーシップを発揮でき、それに対して誰もがフォロワーシップを発揮できるようにペアやグループを頻繁に変え、リーダーシップとフォロワーシップを発揮できる環境設定を整えています。「役が人を育てる」といわれるように、TAPでは様々な役割や多様な立場にたって人と関わる体験学習です。そのため、キャリア教育で求められるリーダーシップを含む人間関係形成・社会形成能力等の基礎的・汎用的能力の涵養にも貢献できるのです。

TAPセンターはリーダーシップの育成が目的の一つです。玉川モットーは“人生の最も苦しい、いやな、辛い、損な場面を、真先に微笑をもって担当せよ”であり、TAPはこのモットーを実行できる人づくりにも貢献しています。この玉川モットーは、ファーストペンギンに親いと考えます。
ファーストペンギンとは、天敵がいるかもしれない海に危険を承知の上で魚を求めて最初に飛びこむペンギンのことです。転じて、リスクを恐れず初めてのことに挑戦するアドベンチャー精神の持ち主に対して敬意を込めて「ファーストペンギン」と呼びます!

どんな時代にあっても不平・不満や課題があります。これらに対して積極的にリーダーシップを発揮し、率先して改善していく仕事を誰かが担わなければなりません。不平・不満を提案に変え、玉川モットーを実行する気概のある人こそが21世紀を先導していくのに相応しい人だと考えます。
今後、未知の苦難があったとしても、失敗を恐れずに挑戦していく自己冒険力(自分自身で人生を開拓する力)を身につけ、リーダーシップを発揮できる人を育てることがTAPの使命でもあります。

誰かのために率先して行動し、他者に何らかの好影響を与えられる人を育てたいのです!

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