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2021.05.31

こころと向き合う「Challenge by Choice」

白山 明秀

TAPセンターの指導スタッフによるコラムを毎月掲載していきます。

選択とは・・・

「Challenge by Choice」という言葉は、Project Adventure(PA)で大切にされている言葉であり概念です。これは、目標に向けて最大限の挑戦が約束され、その内容とレベルが自ら決定することができ、また選択は誰からも尊重されるという考え方です。昨年、惜しまれつつ亡くなったプロジェクトアドベンチャーのトレーナーのカール・ロンキ(Karl Rohnke)が作った言葉であり、現在でもPAでは軸となっています。

「Challenge by Choice」という言葉を初めて聞いたのは、26年ほど前のProject Adventure(PA)の研修初日の講義です。当初、この言葉の意味を深く考えもせず、何故?このような考え方がいま必要なのかとその時は思いました。
この言葉の意味を深く理解したのは、研修終盤の4日目のことだと記憶しています。チームの仲間の支援によって高い所に登る活動に取り組みました。私が研修に参加するにあたり最大の懸念事項は高所恐怖症です。今まで高いところでの活動は全て避けてきた思いがあり最大の難関でした。実際、体験の場になれば挑戦することができないのではないかと考えていました。葛藤を抑えるためにクライミングをする前日まで誰もいないフィールドに行き、ため息をついてエレメントを眺めていたことを思い出します。 結局、当日は3回のクライミングに挑戦をすることができ大きな達成感を得ることができました。その日の「ふりかえり」では仲間に感謝を伝え、熱い思いを語ったことを今も覚えています。あの日、クライミングに挑戦しなくても仲間の支援だけでも良かったのですが、葛藤の末に自ら選択をし挑戦できたことに大きな達成を感じました。また自身の変化と成長を強く感じることもできた瞬間でした。
活動を通して達成感を持つことができたのは、皆がやるから挑戦するのではなく、自身の選択で「Challenge by Choice」したことが強い達成感を持つことができたのだと思っています。あれから長い年月が経っても、あの日のことは鮮明に覚えており、今でも大切な言葉として人生や生活に多大な影響を与え続けています。

教育現場で・・・

「Project Adventure(PA)」のルーツでもある「Outward Bound」はドイツ人教育哲学者であるクルト・ハーン(Kurt Hahn)が創設した冒険教育です。
クルト・ハーンは以下の言葉を残しています。

「体験は強要するべき」
「教育者や保護者が健全な経験を子どもに強いないのは怠慢である」

この言葉を知った時から、「Project Adventure(PA)」の概念である「Challenge by Choice」の考え方との違いを感じました。そこで長野の「Outward Bound Japan(OBS)」に行きスタッフに確認をする機会を持つことができました。OBSのスタッフは、この言葉を使用することはせず「挑戦をすることを前提として考えており、全ての参加者に挑戦することを支援する」と聞くことができました。
カール・ロンキがアメリカでOutward Boundのトレーナーをしていた時代では参加者に大きなプレッシャーを与えていました。彼は学校教育での活動では「強いる」体験からソフトなアプローチの方が「気づき」や「自己へのイメージ」が改善されると考えて「Challenge by Choice」の概念が生まれました。どちらの考えも理解ができるのですが、環境や参加者の目的や状況によって左右すると思います。
私は学校現場では困難な体験を「強いる」ことは難しいと考えています。ウイリアム・グラッサーの「選択理論」ではないですが、外発的動機付けではなく、内発的動機付けでのアドベンチャーの方が自身も含めて大きな達成感と成長を得ることができると考えます。内発的動機付けは大事なアプローチですが、それを支援するにはかなりの熟練と時間と環境が必要です。Outward Boundのように自然環境を中心としてのプログラムは、リスクマネージメントを含めてスタッフの苦労は多いと聞いています。また学校教育での授業実施には多少の無理が生じるのではないかとも思います。ただし人工で作られたアドベンチャー施設よりも自然と向き合った環境でのアドベンチャーには大いに魅力的だと思っています。

新年度をスタートして・・・

新学期となり、志を新たにした大学生や中高生と関わる機会が昨年に比べ多く持つことができました。学生や生徒たちが、玉川の丘でたくさん挑戦をして豊かで楽しい学校生活を送り、仲間との学びを深めてほしいと思います。学校生活には自らの意思で挑戦することができる場面が多くあり、そこには「Challenge by Choice」ができる環境が整っています。多くの挑戦や体験を得て自己の成長に繋げることを望みます。
TAPセンターは玉川の理念や理想でもある「全人教育」と「アドベンチャー教育」の理念を融合させて実践の場を作ることにあります。今後も未来に向けての課題を見つけて、達成するための挑戦とアドベンチャーができるプログラムを多く提供していきたいと考えています。

最後に・・・

玉川のモットーである

「人生の最も苦しい、いやな辛い損な場面を 真っ先に微笑みを持って担当せよ」 

私がとても大切にしているモットーです。人生には沢山の選択があると思います。自身も過去には「できる」「できない」で考えていることが多かったように思います。このモットーのように自らの意思で進取的に選択ができる玉川っ子でいたいと思います。

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