ColumnTAPコラム

2022.05.27

縁、この不思議なるもの

光川 鷹

TAPセンターの指導スタッフによるコラムを毎月掲載していきます。

だんだん暑さが増す頃となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。今年度より、TAPセンター指導員として入職いたしました、光川 鷹と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

寒空の4月1日より仕事が始まり、各学部対象とする一年次教育に奔走する4月でした。この一年次教育のTAPは、私が初めてTAPに出会ったきっかけそのものでした。当時、TAPの体験を通して印象に残っていることは「なんで、こんなに楽しいのだろうか。」と漠然と思っていました。その体験からTAPへ興味を持ち、新入生対象の体験会を通じてインターンになりました。私の学生生活はTAP指導スタッフをはじめとするインターンの先輩、同期、後輩、プログラムで関わった参加者の方々と共に過ごす日々でした。高校時代に、玉川の受験を提案してくだった先生(自習中、通りすがりにお菓子をくれる先生)には感謝しかありません。

学部卒業後、大学院へ進学し指導担当の先生と研究に向かう時間はかけがえのないものとなりました。研究指導の際に、「コロナ禍によって研究テーマを吟味し続けた時期や、研究に至るまでの経験を支えてくれた素敵な先生方に出会えたのは光川君が引き寄せた『縁』そのものだね。」と身に余るお言葉をかけてくださいました。その際に、必ず登場するのが松下幸之助の著書『縁、このふしぎなるもの』(PHP研究所、1993年)という書籍です。そこには、「お互い人と人との間には、個人的な意思や希望を超えた縁の力が働いている。だからその縁のあったことを謙虚に喜び、その喜びの心でお互いのつながりを大事にし、さらに強めていきたい。」と書かれています。著者が人との出会いをどれほど大切にしているかが窺い知れる一節であり、縁の力を熱く語っています。人が生きていくうえで、縁のもつ不思議な力をどのように活かすか、そこで出会った人をいかに大切にするかは、個々人に委ねられています。農耕民族をルーツにもつ日本人(狩猟民族のDNAも入っているという考えもありますが)は、保守的で計画を立ててから物事を遂行するため、ネガティブな印象を持たれることが多いと思われます。しかしながら、農作業は人々と協働して生活づくりを担う営みであるため、人とのつながり、言わば「縁」を大切にする遺伝子を持つと考えられます。このように考えると、春は別れと出会いの季節などと言われますが、一年次教育のTAPは「知り合う活動」を中心とするプログラムでした。まずは関わった人に対して「縁」ある仲間づくりのきっかけになってくれたら嬉しく思います。

VUCA時代と言われる昨今、毎日たくさんの想定外の出来事や偶発の事態が起こっています。そのため、これからの将来を予測するのは難しいことかもしれません。TAPが考えるAdventureは「成功の不確かな困難な目標に向かって自らの意思で一歩踏み出す」ことを指しています。まさに、どのような状況下であれ自らの選択のなかで行動する気概を育みたいのです。昨年度、TAP設立20周年記念シンポジウムが開催され、その挨拶のなかで小原芳明学長は「開拓者であることは、前例なきことへ挑戦することです。何ら成功への道のりが示されていない、実証されていないから、不安に満ちた過程でもあります。大切なのは、失敗の原因を探り、改善へのレッスンを得ることです、試行錯誤がないまま、新しいことが成功する保証はありません。そこに失敗を恐れないで試してみようという冒険心を育ていくことの重要さがある」と話されていました。これまでも、これからも失敗するかもしれないという不安と対峙しながらAdventureすること、失敗した際には改善の方向性を模索して新たな挑戦をすること(Try and Error)が必要とされるのではないでしょうか。

キャリアカウンセリング理論の先駆者であるJohn D. Krumboltzは偶然起こる出来事を肯定的に捉え、活用してチャンスをつかむという「ハプンスタンス理論」を打ち立てました。このハプンスタンスの考え方こそが、キャリア形成に結び付くと主張しているのです。変化の激しい時代のなか、不安を抱える方々に勇気を与える考え方であると思われます。TAPでは困難な課題に直面するなかで、想定外の結果や事態に対処しながら一歩踏み出すことが大切になります。こうしてみると、ハプンスタンス理論はTAPの体験的特質において、非常に示唆に富む考え方であろうと考えます。

最後に、私が大切にしている言葉を紹介させてください。村上春樹のエッセイに登場する「小確幸」(小さいけれども確かな幸福)という造語です。例を挙げるとするならば、運動後にシャワーを浴びてゆっくりくつろぐことや、コーヒーを淹れるときの香りを嗅いだ時など、あなただけが感じる確かに、幸せだと感じる瞬間のことです。このような小さくても確かな幸せを感じることができれば、大きな幸せがなくても結構幸せに生きられるという意味です。プログラムの際に、「最近あった、ちょっとした幸せなこと(Little Happiness)」を二人組で伝え合うことがあります。その際に「思いつきません」という学生に出会うことがしばしばあります。(私も陥ることがありますが)その都度、「小確幸」の話をさせてもらっていますが、生きやすくなるための秘訣が隠されているのではないかと感じております。今回、「縁、このふしぎなるもの」というタイトルに始まり、走り書きの拙文のため見苦しい点も多かったかと存じます。ご判読いただきありがとうございました。このように文章にしながら自身の考えを皆様に伝えることの難しさを感じたとともに、これまでを振り返る良い機会となりました。皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。

【引用・参考文献】

  • ・松下幸之助『縁、このふしぎなるもの』PHP研究所、1993年、194頁
  • ・John D. Krumboltz、Al s. Levin(著)花田光世、大木紀子、宮地夕紀子(訳)『その幸運は偶然ではないんです!』ダイヤモンド社、2005年
  • ・村上春樹『うずまき猫のみつけかた』株式会社新潮社、1999年、128頁

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