ColumnTAPコラム

2022.07.28

TAP 4-STYLEs
Shin TAP Unofficial Site & Give You A Little Music
TAPの4つのスタイル- 『シン・タップ』非公式サイト、そして音楽を少しだけ

大山 剛

TAPセンターの指導スタッフによるコラムを毎月掲載していきます。
※8月はお休みです。次回コラムは9月掲載予定です。

玉川大学TAP センターでは、1つ、「TAP」をできるだけ多くの人に知ってもらいたいという願い、2つ、今「TAP」は教育の世界の中でどこにいるのかという認識、そして3つ、「TAP研究」の成果を未来に届けるという使命。そんなことを考えながら、その時にその場でふさわしい企画として、シンポジウムや研究会を実施しています。その効果はまだまだ満足できるとは言い難い場面もありますが、それでも私たちは前に進んでいます。創設から22年がすぎて今のTAPが前に進み続けることは、私たち自身が生徒・学生にC-Zoneの概念を伝えている以上、とても大切な要素で当然のことだからです。私たちはいつも「TAPとは何か」を問い続けながら前に進もうとしています。
ところで最近、以前のヒーロー物語が新しい視点でリメイクされて話題を呼んでいます。シン・ゴジラ-2016、シン・エヴァンゲリオン2021、今年はシン・ウルトラマン、来年もまた一つ。過去を知る世代には懐かしく嬉しい企画ですが、実際に拝見すると郷愁だけの作品ではありません。過去の物語をなぞりながら新しい解釈としての展開。過去と未来をつなぐストーンマイルです。そのように感じさせてくれる一番の理由、それは現作品の作り手が過去の作品をリスペクトしているからです。作品の所々にオマージュが見られますから(あざとく見せている?)、親和性が高く、年配にも共感できるでしょうし、現代に調和するシン(新)解釈が際立つのでしょう。
こうしたリスペクトの姿勢やオマージュ的手法は、現在のTAPで見習いたいところが数多くあります。もちろんTAPは興行収入目的ではありませんがそれでも、冒頭のように「令和の現代社会においてのTAPとは何かという問いと答えは必要」です。そこで今回は現在の「TAPのスタイル」について感じていることを『シン・タップ』として扱ってみます。いつものように個人のバイアスがかかっていることをご理解ください。またそれぞれの解釈やスタイルに応じて、私の頭の中で流れているテーマ曲もこの機会に紹介します。それはBGMなのか、イメージソングなのか、クロージングテーマなのか、よく分かりません。いつも何となく流れている曲で、特に何か根拠があるわけではありません。当然、異論もありますが、どうぞご笑納ください。

1. TAPスタンダート

TAPのエントリーモデルと言い換えられるスタイルです。TAPは言うまでもなく玉川学園の教育理念である「全人教育」の具体的な体験の形として、児童・生徒・学生に提示され、それらの活動を通してTAPを構成するいくつかの概念を学びます。それは「Challenge By Choice」とか 「Open-Minded」「C-zone」などなど、いくつかのキーワードについて説明しながらTAPを通して玉川教育について理解を図ります。もちろんスタッフによって多少のアレンジは入りますが、全人教育と統合した体験学習プログラムであることに間違いはなく、大学の101授業やK12の学年スタート交流プログラムとして準備される場面が多くあります。実施プログラムの幅も広いので、実施時間や対象年齢に合わせて柔軟に対応が可能です。いわゆる「初めてのTAP」はこちらが主です。受講の感想は様々ですが、学校教育ではあまり経験しない活動ゆえでしょうか、新鮮な時間だったと言われます。彼らの内的な感動やパラダイムシフト等を通して、自分が変わるキッカケを提供できることを私たちは嬉しく思います。「それじゃーまたね」と終了の挨拶をする時、いつもBGMとして「怖くて仕方ないけど 本当の自分 出会えた気がしたんだ YOASOBI-群青より」が聞こえてくる気がしています。

2.TAPクラシック

TAPの始まりは2000年のTAPセンター設立がスタートですが、その原点はアメリカの非営利団体PA,Inc.(ProjectAdventure,Inc.)と、1995年設立のPAJ(Project Adventure Japan)に深い関わりを持ちます。このPA,Inc.(ProjectAdventure,Inc.)の手法を取り入れて作られたプログラム、加えて、実践を元に学校教育のために開発されたOBS(Outward Bound School)の概念も大きく影響しています。ですから現在のTAPの根底には、導入当初から変わらない考え方やアプローチがあります。現代のアメリカではPAを始め、体験教育を普及・実践している団体が多数ありますが、同様にヨーロッパ諸国、南米、オセアニア、アジア諸国においても、体験学習の実践者が研究を共有する機会を持っています。「クラシック」と言う言葉を使うと「古臭い」とか「時代遅れ」とかマイナスイメージにも受け取られますがそうではありません。ここで述べている「クラシック」はTAPにおいて基礎基本を構成するもので、Adventure Programの根幹であり、時代に左右されない力強さを表しています。某アニメ(1)では「クラシック? つまり当たり前ってことさ」とも言われていますが、音楽で言えば「It's time to try, Defying gravity, Some things I cannot change, But till I try, I'll never know! The Broadway Musical-Wicked」がフィットします。(1)パリピ孔明シーズン1第6話 「孔明’s フリースタイル」

3.TAP SDGs

TAPはセンターの設立以前から、今でいうSDGsに関連の深い「環境教育、国際教育」との連携を図りつつ発展しています。特に本学教育理念の12信条のうち「自然の尊重、国際教育」においては、全人教育における具体的な体験学習プログラムの展開と言えます。
例えば過去、小学部とカリフォルニアのハーカースクールとの相互交換プログラムでは、「ツリープロジェクト」という環境学習の前提として、TAPが児童相互の親睦はもちろん、協力や他者理解を助長するための大切な時間として扱われました。中学部や高等部でも国際交流の観点から、TAPを通して本学と海外提携校の生徒たちが互いの行動や考えを理解することで、地域が異なっていても「共通であること、違いのあること、それそれの個性や価値観が認められること」を学んでいきます。もちろん大学での交際交流も同様です。最近ではドレクセル大学などのように、TAPが海外留学準備のお手伝いをする機会も増えています。
ご存知のように本学の「環境についての教育」では「認識・態度・経験・技能・定着」というそれぞれの場面がありますが、TAPもK12における林間学校やスキー学校、大学における短期研修などと同様に、環境学習を含めた体験活動として様々なアプローチを重ねてきました。また、各発達段階における国際交流プログラムの一助として、TAPのkey wordの一つでもある「多様性の尊重」について学ぶ場を提供しています。こうした学習を音楽で例えて「And it’s true, either you’re wrong or you’re right But,if youre thinking about my baby.It don’t matter if you’re black or white. Michael Jackson - Black Or White」とすると「直接的すぎる」と言われますね、すみません。それからSDGsの中には「地域社会への貢献」という項目もありますが、TAPの地域連携についてはまた別の時に記述します。

4.TAPニューウェーブ

多くの教育プログラムでは「その場所にとどまること(現状維持)は、後退に他ならない」と厳しい指摘がなされます。ですから本コラムの冒頭にも記したように、私たちTAPスタッフは基礎基本を大切にしながらも前を向いて進んでいます。TAPスタンダートやTAPクラシックでは補完しきれない場面も増えてきました。
ですから「社会変容に対応するDX人材の育成」とか「STREAM教育×TAP構想」とか、研究課題も山積しています。またOn Campus研修を求めて問い合わせされる企業の皆さんからも、これまでの目標設定や視点だけでなく、例えば人間関係トレーニングや人間関係プロセス、あるいは組織開発やグループ・ダイナミックスといった関心も寄せられているTAPです。言い換えれば、新型コロナウィルスの影響も含めて、令和における働き方の変化が、これまでの昭和・平成の組織の在り方を変容させている時代になりました。そうした依頼や要望を電話で受けながら、TAP研修をお薦めしているときに流れているのは「曖昧に微笑んで 周りの視線なんか 気にしてなくていい 大切な仲間なら あなたが輝くことを願うはず 本当は誰もが 本当の笑顔を 探している Little Gree Monster-世界はあなたに笑いかけている」です。

シンTAPのこれから、そしてリマインド
TAPの解釈として、筆者のバイアスで4つのスタイルに分けてみましたが、このスタイルは明確に分かれているものではありません。むしろ対象や目標に合わせて、色々な要素が含まれ組み合わせています。それが各プログラムのオリジナル性を大切にしていることに繋がります。各プログラムにおける体験の価値です。しかし一方で、TAPに代表される体験学習という事象は厄介です。「TAPを体験した人にとっては理解できる自分の中の事実ですが、TAPを体験していない人にとっては確かめることのできない他人の事実」です。ですから多くの場合、両者の議論が平行線になります(笑い)。これはTAPに限らず全てのアドベンチャープログラムに関わっている人たちの実感です。それでも私たちは、「1つの体験を通して、自分の気づいたことを確認して、仲間と意見や考えを分かち合い、そのグループに共通する何か大切なことを見つけること」は、とても素敵な経験だと考えています。年齢も出身も関係ありません。私たちが体験から学ぶことの意味、すなわち「手間はかかるだろうけれども、その手間を惜しんでは、その手に何も残らない」ということです。Tamagawa Adventure Programの目的はより幅広い分野に広がっています。ADVENTUREの場は野外だけにあるのではなく、運動領域だけで展開するものではありません。日常生活の全ての中にある「アドベンチヤーに気がつくこと、それぞれの課題に焦点を当てること、個々と集団の目標達成のために挑戦すること」を願っています。そして最後までいい加減な選曲ですみません。締めは「I've looked at clouds from both sides now From up and down and still somehow. Words & Music by Joni Mitchell-Both Sides Now」です。これからもTAPをよろしくお願いします。それではみなさま、2022年の夏も、どうぞ素敵な時間を大切な人たちとお過ごしください。

たくさんの感謝を込めて

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