ColumnTAPコラム

2023.08.17

「主体性」について考える!?

工藤 亘

TAPセンターの指導スタッフによるコラムを毎月掲載していきます。

「○○的」

本コラムでは、「主体性」について考えてみたいと思いますが、その前に「主体的」について触れておきたいと思います。文部科学省は現行の学習指導要領において「主体的・対話的で深い学びの実現」を図ろうとしていることは周知の通りです。ここでの主体的な学びとは、「学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる学び」1)のことです。
では、主体的の「的」とは何でしょうか?goo辞書によれば、名詞に付いて、形容動詞の語幹をつくる「的」には、「㋐そのような性質をもったものの意を表す。㋑それについての、その方面にかかわる、などの意を表す。㋒そのようなようすの、それらしい、などの意を表す。」2)とあります。したがって、主体的とは「主体のような性質をもったもの・・」になりますね。子ども達が主体のような性質をもって、上記の学びを実現することを願っています。

自主性と主体性

次に、主体性と混同されている自主性との対比で考えてみたいと思います。

上記の表から、自主性のある人とは、他者から言われたり、指示・命令されて初めて行動するのではなく、自ら率先して行動する人と考えます。それに対して、主体性のある人とは、自分の意志と判断を活用し、自分で責任を負って物事に取り組める人と考えます。

井上ら(2005)は、主体性の定義を「周囲の大方の意見や自己の義務感にとらわれることなく能動的な行為の主体として問題意識を持ち、自分で選択した課題に沿って考え、判断し、行動しようとすること。また、これらの構えがある状態」3)としました。その理由は、学校教育機関では、子ども達が全く他に捉われず、自由に自己選択することが困難であるためです。
また浅海ら(2001)は主体性には、以下の3つの側面があると指摘しています。
・態度・行動面での自発性 「積極的自発的な行動」
・自らの方向性を定める自己決定 「自己決定力」
・この2つを外界に向けて表現する力 「自己表現力」
4)

以上のことから、主体性には、積極的自発的な行動・自己決定力・自己表現力の側面を持つ点が自主性とは異なり、学校教育機関での主体性と一般社会での主体性では異なる点があるのか考慮する必要があるかも知れません。

企業が求める主体性

武藤(2023)は、仕事現場において社員に求められる主体性は、「間違っていても、粗削りであっても自分なりに考えることである。また自分なりに考えたことを発信することが強く求められる。発信することの先にあるのは、仕事に関して協働すること」5)と指摘しています。また、企業が求める主体性は、「個人の内的活動や行動という個に閉ざされたものではなく、他者と協働することまで含まれる」6)と指摘しています。(図参照)

企業が求める<主体性>の意味の概念図
出典:武藤浩子「企業が求める<主体性>とは何か」東信堂、2023年、p.96

以上を踏まえると、学校教育機関でいう主体性と企業が求めている主体性の間には、共通点もありますが、異なる点もあることが見えてきました。大学で教員養成に携わっている身としては、学生達が企業や教育機関に就職することを支援しているため、この共通点や相違点があることを理解したうえで、主体性の育成にも努める必要があると思います。
最後に、上記を総合的に考えると主体性とは、「たとえ与えられた機会でも自分なりに意味づけや工夫を加えたりして、単なる客体として受動的に行動するのではなく、主体として考え判断したことを発信し、能動的に他者と協働しながら行動すること」だと考えます。
皆さんは、どのように考えますか?? 「知の探究」というアドベンチャーは続く!!

引用文献

1)文部科学省「新しい学習指導要領の考え方-中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ-」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/newcs/__icsFiles/afieldfile/2017/09/28/1396716_1.pdf.p.22(2023年8月15日最終アクセス)
2)goo辞書
https://dictionary.goo.ne.jp/word(2023年8月15日最終アクセス)
3)井上史子、沖裕貴、林徳治『中学校における自主性尺度項目作成の試み』学校ソフトウェア情報研究センター、学校情報研究(182)、2005年
4)浅海健一郎、野島一彦『臨床心理学における「主体性」概念の捉え方に関する一考察』九州大学心理研究2、2001年、p.56
5)武藤浩子「企業が求める<主体性>とは何か」東信堂、2023年、p.96
6)前掲書5)、p.189

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