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今この時代だからこそ「Weakなつながり」が重要になる!
村井 伸二(Shin)
TAPセンターの指導スタッフによるコラムを毎月掲載していきます。
みなさま、あっという間に師走となり、今年も残すところわずかとなりました。歳を重ねるごとに時間が経つのは本当に早く感じられます。時間が空間によって歪められたかのように、あっという間です(単に追われているだけかもしれませんが)。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
「つながり」の再認識と現代の孤立
歳をとるにつれて、人との「つながり」の重要性を一層強く感じるようになりました。世界では紛争や戦争、そして「分断」が叫ばれています。このような混沌とした世の中で、失われた「つながり」を取り戻すために、私たちにできることは何でしょうか。私にできることは微々たるものですが、例えば朝出勤して教職員さんや学生さんと目が合い、挨拶を交わすだけで、とても嬉しくなります(急いでいる時に目をそらしてしまった方、嫌な思いをさせてしまった方がいれば申し訳ありません)。この「挨拶」のやり取りには、全く知らない人、ちょっと知っている人、そしてよく知っている人が含まれます。この「つながり」は、昔から大切でしたが、これから、いや、今この時代だからこそ重要になるのではないかと感じています。今年の最後のコラムでは、この「つながり」についてお話ししたいと思います。
旅が教えてくれた「弱いつながり」の楽しさ
以前お話ししたように、私はバックパックやヒッチハイクの旅をしていました。それはつまり、「誰かとお話しせざるを得ない状況下」を楽しむ人間でした。旅では、知らない人と車に乗り、宿(時には部屋も一緒)を共にし、食事や会話を通じて知り合いになっていきます。このつながっていくプロセスは、私にとって非常に刺激的で楽しかったのです。
旅に出ると、ドアを譲っただけで本当に満面の笑顔で「ありがとう!」と言われることがあり、それだけで一日幸せな気分になれました。別の旅では、真夜中にガソリンスタンド併設のコンビニでコーヒーだけを買おうとしたとき、一見怖そうな店員さんが「それだけか?」と尋ね、私が「はははい」と答えると、「持ってけよ。素敵な夜を!」と言ってくれたのです。これには、本当に幸せな気持ちになりました。また、飛行機に乗れば、大抵隣の席になった人と知り合いになり、話に夢中になって映画を見るのを忘れてしまうほどでした。でも、それが超楽しい!
バックパッカー時代に泊まった「ジャグラーズハウス」という名の宿では、「一つ何か『芸』ができないとチェックアウトできない」というルールがありました(無茶苦茶ですが大人気でした)。国や人種が異なる知らない宿泊者同士が共同体を作り、みんなでボールを投げたり、芸を身につけたり、教え合ったりと頑張っていました。笑。私は、こうしたやり取りや経験から「つながり」の幸せを感じ、自然との戯れにも価値を見出して旅を続けていたのでしょう。
変化する日常と「つながりのなさ」
しかし、最近は様子が少し異なります。以前ある国に行った際、飛行機の中では皆がイヤフォンをして画面を見たり、スマホで会話をしたりしていました。空港の職員さんや店員さんも、無愛想にイヤフォンをしながら対応している姿が目立ちます(全てではありませんが、顕著に感じます)。私が楽しみにしていた旅の醍醐味はどこへ行ってしまったのでしょうか?皆さんも同じような変化を感じていませんか。
日本でも日常では、電車に乗ると席に座っている一列全員がスマホを見ています(顔が照らされていて少し怖い光景です)。これはこれで滑稽ですが。。。満員電車ではアイスブレイキングもなしに、皆が積極的にくっつき合います(委ねて寝ている人もいます。これはトラストでしょうか?)。このような「つながりのなさ」という異常な変化は、旅や日常だけでなく、企業研修や大学の授業の際にも感じています(これは万国共通なのでしょうか)。
私は、この背景には二つの大きな要因があり、いまだに影響を与えていると感じています。一つは、スマホやSNSなどにより、個人や特定の人間関係のみの空間に居心地の良さを感じてつながりが断たれていったこと。もう一つは、COVID-19による物理的、身体的、精神的なつながりの断絶です。だからこそ、「今の若い人はな」という言い訳はNGワードなのです。
「弱いつながり」の社会的役割
クリスティーン・ボラス氏の著書『「つながり」こそ最強の生存戦略である Think COMMUNITY』では、筆者の調査によると、65%の人が職場でコミュニティの感覚を得ていない、76%の人が職場でつながりを持つことが困難、40%の人が職場で身体的・精神的な孤立を感じているといったデータが紹介されています。これらを踏まえながら、さまざまな企業を調査した結果、コミュニティを構築する方法を見出しています。
1.情報を共有する
2.人を解き放つ
3.尊重し合える環境を作る
4.率直さを実践する
5.意義を与える
6.メンバーの幸福度を高める
また、この本では、アメリカのLCC(格安航空会社)であるサウスウエスト航空の取り組みが紹介されています。この会社では、社員に「自分が正しいことを実行するという自由」が与えられています。あるパイロットが、会社の規定のペットケースを持っておらず、ペットと一緒に搭乗できないと悲観しているホームレスの方に目を留めました。そのパイロットは自費で規定のケースを購入し、その場を立ち去ったという事例です。このホームレスの方は、音信不通の家族に会うために、唯一重要な財産であるペットを連れて行きたかったのです。パイロットの行動は、その目的達成に大きく貢献しました。彼がパイロットに対して深く感謝したのは言うまでもありません。
このエピソードを読んで、私もサウスウエストに乗りたくなりました。隣の人はイヤフォンなど付けずに、楽しくお話ししてくれるかもしれません。少なくとも職員さんたちは、私のような客に対しても声をかけてくれるでしょうから。
グラノヴェッダーのSWT理論
私が生まれた頃の1973年から、既に社会学者のグラノヴェッダーはSWT(The strength of weak tie)理論、つまり「弱いつながりの強さ」というものを唱えていました。親友関係のような強いつながり(strong tie)もありますが、ちょっとした知り合い(weak tie)が重要であり、その関係は他者との「ブリッジ(つなぎ)」にもなり、社会的ネットワークを構築していく上で大切である、と彼は述べています。
もちろん、深い親友関係も大事ですが、その関係は強くなりすぎて他のものとの関係を作りづらいという側面があります。しかし、ちょっとした知り合い同士は、他者を巻き込んでいく力があるのです。これは、現代のSNS時代にも可能性があることを示唆しています。
私は、バックパックやヒッチハイクといった行動が私を形成したと述べましたが、よく考えると、小さい頃の記憶が浮かび上がりました。私の母は、とにかく近所で色々な人と挨拶をし、話をしていました。「あの人誰?」と尋ねると、母は「知らない」とのこと。最近、家族でコーヒーを飲みに行ったときも、90歳の母は隣の席の方と「これ私の孫でね…」と、おそらく知らない人に話しかけていました。私は「また始まったよ」と思いましたが、ふと考えると、これはまさにDNAだと気づきました。私がやたらと色々な店員さんに声をかけると、私の妻は「また始まったよ」といった目で私を見るのです(笑)。
日常で実践する「Weakなつながり」
今回は「つながり」について話しました。こんな時代だからこそ、ちょっと目が合ったら「こんにちは!」なんてアドベンチャーをしてみてもいいのではないでしょうか。もしかしたら、そこからちょっとした知り合いになるかもしれません(上手くいかなくても次へ次へと試してみましょう!)。そこからコミュニティが生まれ、みんなが「つながり」、つながり合ってしまうかもしれません。私のアクティビティには、このような要素を踏まえたものを実践していますが、ぜひ実生活でも挑戦してみましょう!
ただ、この間、私一人で電車に乗っている時に、良かれと思って小さい子を抱っこしているお母さんに会釈し、子どもに笑顔を振る舞ったのですが、私のような「なり」のおじさんが笑顔で攻めてきたためか、そのお母さんは非常に警戒しておられました。タイミングと強度は大切です。挨拶も笑顔も「”weak”が大切」かもしれません。
では皆さんも、できる範囲で良き「weakなつながり」を実践してみてください。そして、良いお年をお迎えください。来年も良いお年でありますように!
<引用文献>
クリスティーン・ボラス 著、早野依子 訳
『「つながり」こそ最強の生存戦略である Think COMMUNITY』、2023年、PHP研究所
ハーバードビジネスレビュー「弱いつながりがイノベーションを促進するカギである」https://dhbr.diamond.jp/articles/-/10453(2025年11月10日閲覧)
ハーバードビジネスレビュー「『弱いつながり』が革新を引き起こす」https://dhbr.diamond.jp/articles/-/10449?page=2(2025年11月10日閲覧)
Granovetter, M. 1973. “The Strength of Weak Ties,” American Journal of Sociology, Vol.78, pp. 1360-1380.
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