ColumnTAPコラム
「新人離職の時代に考えたい、才能よりも大切な
「やり抜く力」とは」
村井 伸二(Shin)
TAPセンターの指導スタッフによるコラムを毎月掲載していきます。
新年度が始まり、1か月が経とうとしています。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。キャンパスは新緑に包まれるだけでなく、新入生や進級した学生たちが醸し出すフレッシュな空気に満ちあふれています。
私の息子たちも、この春に新天地での入学・入園を迎え、毎日を楽しそうに過ごしています。みなさんは、ご自身の小学校入学時のことを覚えていらっしゃいますか?私にとっては40数年も前のことですが、当時の私には小学校の正門がとてつもなく大きく見え、まるで長野県・善光寺の仁王門をくぐるような感覚だったと記憶しています(当時は仁王門など知りませんでしたが)。今思えば、それは期待以上に、ドキドキするような緊張感だったのかもしれません。
そんな当時の自分と息子を重ねてしまい、つい心配になって小学校まで付き添っていったのですが、校門の前で息子から「パパはここから入れないからね。バイバイ!」と言われてしまいました。6歳の息子の勇気を前に、自分の心配性の小ささを痛感すると同時に、「子どもってすごいな」と改めて感銘を受けました。
親バカ話はさておき、新しい環境に身を置くのは子どもだけではありません。大学に入学した学生や、卒業して未知の組織へ飛び込む新社会人もまた、大きな変化の中にいます。
そこで最近耳にするのが「若者の離職傾向」です。昭和の価値観であれば「一度入った組織なら、歯を食いしばって頑張るべきだ」と考えたかもしれません。しかし、その価値観だけでこれからの社会を生き抜くのは難しいでしょう。「60歳まで勤め上げ、あとは悠々自適に暮らす」というモデルが崩壊しつつある「人生100年時代」においては、これまでの常識が通用しなくなっているからです。
「無理をしてでも耐え忍ぶか、それとも転職するか」という二者択一の悩みに対しては、それだけではない多様な思考が必要なのではないでしょうか。私個人を振り返ると、若い頃は環境や人間関係が合わず、転職や退職を繰り返していました。辞めては次を探すという作業には多大なエネルギーを要しますし、家族や友人にも少なからず影響を与えていたはずです。あの時は色々ご心配おかけしました。
リクルートマネジメント ソリューションズが2023年に行った調査(新入社員450名、上司・育成担当915名対象)によると、回答した新入社員の17.5%に退職経験がありました。退職理由の上位には「労働環境・条件(時間・休日)への不満」や「給与水準への不満」が挙がり、続いて「人間関係や上司との相性」「希望する働き方ができない」といった項目が並んでいます。
興味深いのは「入社1年目の壁」についての回答です。「仕事に正解がなく、どうすればよいか分からない」「仕事の意味ややりがいが感じられず、やる気が出ない」「プライベートの時間が確保できない」といった声が見受けられました。
これらのデータから推測できるのは、現代において重要なのは「仕事中心で多少の犠牲は厭わない」という過去の価値観ではない、ということです。理想と現実のギャップを埋め、周囲と円滑な関係を保ちながら、いかに仕事とプライベートを両立させるかが鍵となっています。とはいえ、異なる価値観を持つ上司とも、うまくやっていかなければならないという現実もまた存在します。
この記事を書いていて改めて思い出したのが「GRIT(グリット)」という概念です。ペンシルベニア大学のアンジェラ・ダックワース教授が提唱したもので、「才能やIQ、学歴以上に、個人の『やり抜く力』は社会的な成功を収める重要要素である」とされています。GRITは生まれ持った才能とは関係なく、失敗を恐れずに挑戦し、粘り強く努力を継続することで高められるそうです。
その要素は、困難に立ち向かうGUTS(度胸)、失敗しても諦めないRESILIENCE(復元力)、目標を見据えるINITIATIVE(自発性)、最後までやり遂げるTENACITY(執念)の4つ。なんだかTAPの雰囲気に似てきましたね。「TAPをやればGRITが高まる!」と声高に言いたいところですが、具体的にはどのように高めていけばよいのでしょうか。
また、Forbes Japan誌では、GRITを活用して目標を達成するための「8つの方法」を紹介しています。
1. SMARTな目標設定:具体的、測定可能、達成可能、現実的、期限付きの目標を立てる。
2. 持続的な注意力:目標を細分化し、一つひとつに集中して挑む。
3. 事前の計画立案:起こりうる困難を予測し、対処法を準備しておく。
4. 恐怖への粘り強さ:努力がパフォーマンス向上に繋がると信じ、動機づけを行う。
5. コミットメントの維持:その目標が自分にとってどれほど価値があるかを理解する。
6. 自己効力感:自分を信じ、タスクを達成することで「できる」という信念を強める。
7. 支援ネットワークの活用:仲間にフィードバックを求め、軌道修正しながら高め合う。
8. 節目の祝福:小さな成功体験を自ら祝うことで、自己肯定感を高める。
ここまで読めばお気づきでしょう。これこそがまさに「TAP」そのものではないでしょうか。改めて、TAPのプログラムの中でこれらのキーワードを焦点化し、参加者のみなさまと共に高め合っていきたいと感じました。今年も多くの企業様が新人研修に来てくださっています。GRITの要素を取り入れながら、共に「アドベンチャー」していきたいと考えています。
さらに、これから社会に出ていく大学生を考えるとある言葉を思い出します。以前、元立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんの講演を聞いた際、出口さんはこうおっしゃっていました。「ここには企業のトップの方々がいらっしゃると思います。有名な大学でなくとも、自分で決めて入った大学で優秀な成績を収め、頑張った学生をおたくの企業に入れてあげてください」私もすかさず「まさにその通り。良いことを言われる」と心の中で頷いていました。これはつまり、「やり抜く力」を評価してほしいということですよね。
この考え方は、私生活にも活かせそうです。私が日々の生活を楽しく意味あるものにしていけば、子どもや家族にも良い影響があるかもしれません(「パパは自分のことばっかり」と言われるかもしれませんが……)。もし息子たちが困難に直面したとき、「パパもGRITで頑張っているから、僕たちにもできるはずだ」なんて思ってくれたら嬉しいですね。もっとも、私自身はそれほど強くはないので、「たまには優しく助けてね」とも思っていますが(笑)。
そういえば、昨年度卒業した元学生(立派な社会人)たちからも、既にぽつぽつと近況報告が届いています(嬉しいものです)。最初から全てを完璧にこなすのは難しいものですよね。できなかったことは先輩からフィードバックをもらい、できたことは自分を肯定しながら、グリットで日々を楽しんでいってくださいね。頑張っている自分にご褒美をあげることも大切です。まあ、あの人たちならきっと大丈夫でしょう!
さて、このコラムを書き終えたら、私も自分をちょっと褒めてあげようと思います。コーヒーとドーナツを用意して。そしてグリ(い)っともう一杯!おあとがよろしいようで...
みなさまも、どうぞ新しい生活を楽しくやり抜いてください!
<引用文献>
リクルートマネジメント ソリューションズ 「なぜ早期離職は起こるのか?離職理由や留まる理由を紹介」
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001212/ (2026年4月25日閲覧)
Kaonavi 「グリット/GRIT/やり抜く力とは?【意味を解説】身につけ方」
https://www.kaonavi.jp/dictionary/grit/ (2026年4月25日閲覧)
Forbes Japan 「成功を引き寄せる「グリット」とは?理想の人生をつかむ『8つの方法』」
https://forbesjapan.com/articles/detail/70511 (2026年4月25日閲覧)
アンジェラ・ダックワース(著)、神崎朗子(訳)『やり抜く力GRIT(グリット)―人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』 2016年 ダイヤモンド社
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