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2026.07.27

「対話」で学校を動かす
―令和の校長に求められるファシリテーション能力

工藤 亘

TAPセンターの指導スタッフによるコラムを毎月掲載していきます。

「令和の日本型学校教育」の実現が求められる今日、学校経営の在り方も大きな転換期を迎えています。文部科学省は、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を掲げるとともに、学校を「学び続ける組織」として発展させることの重要性を示しています。また、「校長及び教員としての資質向上に関する指標」では、校長に求められる基本的な役割として学校経営方針の提示、組織づくり、学校外とのコミュニケーションと働き方改革の重要性を明示しています。また校長には教育に関する専門性に加え、組織マネジメント力、関係機関との連携・協働、教職員の育成等、多面的な資質・能力が求められています。特に校長が基本的な役割を果たすうえで求められる能力として、教育者としての資質、マネジメント能力、アセスメント能力、そして「ファシリテーション能力」が位置づけられています。

ファシリテーションとは、単に会議を円滑に進める技術ではなく、多様な立場や価値観をもつ人々の対話を促し、それぞれの知見や経験を生かしながら、組織として最適な意思決定へ導く働きであり、「知的・情緒的相互作用を支援・促進する働き」です。したがって、校長に求められるファシリテーション能力とは「答えを示す力」ではなく、対話を通して「答えを共に創り出す力」とも言え、学校内外の関係者の相互作用により、学校の教育力を最大化してことが求められています。

かつて学校経営は、校長の経験やリーダーシップによって方向性が示され、教職員はそれを実践するというトップダウン型や鍋蓋型の側面が強かったのです。しかし、現代の学校が直面する課題(不登校やいじめへの対応、インクルーシブ教育の推進、ICTの効果的な活用、教職員の働き方改革、地域学校協働活動の充実等)は、一人の管理職の経験だけで解決できるほど単純ではなく、複雑な課題が同時進行しています。これらの課題は、教職員と専門家(SCやSSW等)が知恵を出し合い協働し、保護者や地域、関係機関とも連携しながら解決していく必要があります。そのため校長には、指示を出すだけではなく、多様な意見を引き出し、整理し、共通の目標へと結び付けるファシリテーターとしての役割が期待されています。

特に「校長及び教員としての資質向上に関する指標」が重視する「学校組織マネジメント」の視点から考えると、学校は一人の優れたリーダーによって支えられる組織ではなく、教職員一人一人の専門性を生かす「チーム学校」として機能することが求められています。その実現には、校長が教職員の意欲や創意工夫を引き出す関わり方が不可欠です。

職員会議を例に考えてみます。報告や連絡だけで終わる会議では、教職員は受け身になりやすいですね(実感大アリです!)。一方で、校長が問いを投げかけ、安心して発言できる雰囲気や環境をつくり、多様な意見を可視化しながら方向性を整理することで、会議は「共有の場」から「熟議の場」へと変わります。教職員は自ら意思決定に参画したという実感をもち、その後の実践にも主体的に取り組むようになるでしょう。このプロセスこそが、学校改善を持続可能なものにするのです。

また、「令和の日本型学校教育」が目指す「協働的な学び」は、児童生徒だけに求められるものではありません。教職員自身も互いに学び合い、支え合いながら専門性を高める必要があります。そのためには、自由に意見を交わし、失敗を共有し、新たな挑戦を歓迎する心理的安全性の高い職場づくりが不可欠です。校長のファシリテーション能力は、このような組織文化を醸成する基盤となるため重要視されるのです。

さらに、近年重視されているスクール・コミュニティの視点からも、ファシリテーション能力は重要です。学校運営協議会や地域学校協働活動では、保護者、地域住民、行政、企業等、多様な立場の人々と対話を重ねながら学校づくりを進めることが求められます。価値観や期待が異なる関係者の思いを丁寧に受け止め、共通の目的を見出していく営みは、まさにファシリテーションそのものです。

校長は学校経営の責任者であると同時に、学校という学習共同体のデザイナーでもあります。教職員が互いの専門性を尊重し、保護者や地域と協働しながら子ども達の成長を支える組織を築くためには、対話を促進し、人と人をつなぐ力が求められます。これからの校長に必要なリーダーシップは、すべてを知り、すべてを決めることではなく、多様な知恵を結集し、対話によって新たな価値を創造することです。その鍵となるのが校長のファシリテーション能力だと考えます。令和の学校経営は、「管理する学校」から「共創する学校」への転換に他ならないのです。対話を大切にし、人を育て、組織を育てる校長こそが、「令和の日本型学校教育」を実現する原動力となるでしょう。校長のファシリテーションの旅は続く!!

<参考文献>
公立の小学校等の校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針(2026年7月16日最終閲覧)
https://www.mext.go.jp/content/20250221-mxt_kyoikujinzai01-000023812_1_01.pdf

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